Switzerland -3nd DAY-

クライネ・シャイデック -Klaine Scheidegg

6時半起床。
ベランダに出ると空気が涼しい、おいしい。
空模様を見ると晴れていて、天気は良好みたいだ。ユングフラウ行きを決定する。
朝食をすませて、簡単な荷物をまとめる。まだ大きな荷物は部屋替えのためクロークに預けて出発。駅前でユングフラウパスを購入。ユングフラウの麓、クライネ・シャイデッグへ行く登山電車に乗り込んだ。
グリンデルワルトの駅で列車を待つ 離れゆくグリンデルワルトの村並み 木造のトンネルと岩肌が見える草原
相変わらずどこに行ってもイイ景色。絵になる風景ばっかりで絵本のようです。しばらくすると、アイガーが迫っていき裏側にあったメンヒ(標高4099m)が顔を覗かせる。アルプを歩く牛の群れも…。
アルプを歩く牛の群れ 姿を現すアイガーとメンヒ

途中下車 -Eiger Gletscher


列車に揺られて30分でクライネ・シャイデックに着く。
ここで乗り換えて、いよいよドイツ語で『女神』という意味のユングフラウに登る。綺麗なインテリアで施されている列車に乗り込む。乗り込んでから、しばらくして大切な事を忘れていたのにきがついた。いくらユングフラウパスを持って入るとはいえ、次の駅から終点、トップ・オブ・ヨーロッパまでは別料金なのだ。隣に日本人と相席になったので聞いてみたら、クライネ・シャイデックで買えるよと。オーノー、前後不覚…。仕方なく、次駅アイガー・グレッシャー駅で降りる。30分に1回の運行なので、その分待つ羽目に。



アイガー・グレッシャー
ドイツ語で訳すると「アイガー氷河」。
その名通り、駅の横を少し下ると深い谷があり、その奥に巨大な氷河を眺める事が出来る。駅はレストランしかなくかなり暇だったので周辺をぶらぶら右手に見えたハイキングコースを少し下る。ここはすでに標高2500m。ちょっと歩いただけなのに、はやくも息切れした。やばい高山病の前兆だ。ゆっくりめに歩いて、空気になれることにする。
でもあるいっていった甲斐はあった。つまづいたら転げ落ちそうなほどの急傾斜の深い谷のてっぺんからユングフラウを見上げる。周りにはハイカーは少ない…いや皆無じゃん。
風景ひとり占めを満喫する。
眺めていくうちに次発がやってきたので慌てて駆け上る。高山病の前兆をまた再発させてしまう(笑)
どうにか電車に乗れた。
そして電車は動き出し、いざヨーロッパ最高地の鉄道駅、その名も『トップ オブ ヨーロッパ』へ!

ヨーロッパで最も高い駅、『トップ オブ ヨーロッパ』 -Top of Europe


アイガーを掘って造られた長い長いトンネルを過ぎて一気に3500mの高所へ駆け登る。列車の中にこれから通るルートを解説した映像があって、演出がクールでカッコよかった。スイスって何気に良いデザイナーが多いのかも。
終点『トップ オブ ヨーロッパ』に到達すると、ひんやりとした空気が入ってきた。構内の出入口は帰り客でごった返しになっていた。
構内の窓から外の風景を眺めると、辺り一面は銀世界。アレッチ氷河ユングフラウが窓から望める。『トップ オブ ヨーロッパ』にはいくつかのスポットがある、展望台などは後回しにして、まずは氷の宮殿、アイスパレスに入ってみた。


氷の宮殿、アイスパレス -Eispalast


入口にアイスパレスの看板。そのまま『氷の宮殿』と日本語直訳の表記もあった。「ファイナルファンタジーかい」と素でツッコんでしまった。どうせよくある氷の部屋ばっかなんだろと思ったら、床まで氷で驚いた。滑る滑る〜。歩くと転びそうなので、滑りながら通路を進んでいく。中はいわゆる氷の彫刻が数体展示されていた。どれも造詣が深い。出口付近には巨大な天使像があり、あちこちにコインが投げられていた。どんなご利益があるが判らないが、とりあえず僕も5SFrほど投げてお願い事をしてみた。宮殿というにはフロアも小さくあっという間に見終えてしまう。氷の宮殿を出ると建物の外に出れる出口を見つけた。ユングフラウの雪山の地に足を踏み入れる。

ユングフラウヨッホ -Jungfraujoho

トップオブヨーロッパのある場所は正式にはユングフラウヨッホと呼ばれている。トップオブヨーロッパは駅の名前に近いといってもいい。ここは標高は3500mには達していて、辺り一面は夏でも雪が溶けない万年雪で覆われている。『トップオブヨーロッパ』の東口からここに出ると、南にユングフラウ、北東にメンヒを見上げ、北から西にかけては眼下にベルナー・オーバーラントを望める事が出来た。そして東に、世界遺産であるヨーロッパ最長22Kmのアレッチ氷河の出発点。あまり壮大な景色に感激してしまって、ずっと30分ぐらいだろうかそこに居ついていた。ツアー客が次々現れては、帰って行く。予定が決められてるせいなのだろう。名残惜しそうに去って行く。ツアーにしなくて良かったと、一瞬思った。標高3500メートルの何者にも汚れていない新鮮な空気はおいしい。まったりと景色を眺めていた。

ユングフラウヨッホからフェニックス展望台へつなぐトンネル -A tunnel to Phenix from Jungfraujoho


フェニックス展望台 -Phenix


今度は150mの高速エレベーターを登った先にあるフェニックス展望台に向かった。ちよっとしたカフェを通り過ぎて階段を上ると展望台の入り口。「トップ オブ ヨーロッパ」と書かれた看板がある。ここの眺めももちろん素晴らしい。四方八方遮るものが何もない。ひととおり眺め、風景を写真に収めた後は、階下に降りてカフェてコーヒー飲みながらゆっくりと日記を書く。2nd Dayから今までのの続きを書いた。3500mのヨーロッパ最標高鉄道駅でユングフラウ、アイガー氷河を望みなからまったりと旅の思い出を書くというのは情緒あってよかった。

犬ぞりはどこだ? -Adventure in Jungfrau

ところで、ガイドブックによるとここではなんとシベリアンハスキー犬ぞりがたった8SHFで体験できると書いてある。その場所は外に出て雪道をちょっと登る必要があるらしい。雪道を少し登るとスキーやスノボをレンタルしてるところは見かけたが、犬ぞりの姿は見当たらない。
かなり多くの人が雪道を登っているのを見て、まだ先なのかと判断し登り続けた。うちはMERRELのアウトドアシューズ履いていて、これは撥水効果はあるが防水ではない。人足の轍が出来ているにもかかわらず、雪がすごく柔らかいので歩く度に雪が容赦なく靴の中に入り込んでくる。
登る事20分、トップオブヨーロッパも見えなくなり辺りは雪山と氷河と銀世界しか見えなかった。全然、犬ぞりやってるところなんて見えなかった。これは完璧に行き過ぎたなと思った。が、引き返す事はしなかった。終点には山岳ホテル+レストランがあり、ここまで登ったからにはそこを目指してみようと思った。犬ぞりをするつもりが、ハイキングにハマってしまった。
ゴール近くになると勾配が急になった。高山病の前兆があらわれた。前兆が現れるたびに休んでは登り、休んで登りを繰り返して1時間。スタート時たくさんいた登山客は、いつの間にか数人しかいなかった。ほとんど引き返したのだろう。それでも登り続けた。登り続ける事がこんなに楽しいとは思わなかった。ある意味、ランナーズ・ハイに似たような状況になっていたのだろう。ハイキングの魅力に取り込まれた。

背後を見やるとユングフラウだけが「俺はここにいるぞ。」といわんばかりに勇壮な姿を見せる。前を見やるとメンヒの姿が次第に大きくなったきた。他の雪山も姿を現す。登り道は急勾配のため先が頂上になってるかのように途切れている。急勾配を登りきるとスイスの国旗が立てられているポイントだった。そして先には緩やかな雪道と山岳ホテル。ホテルはメンヒの山にへばりつくように建てられていた。もうへとへとになっていたが、残りわずかな道を体に鞭打つようにして歩き続けた。
そして、ついにゴール到達!心地よい達成感があった。

山岳ホテルのレストラン -Monch


レストランでちょっと遅めの昼食をとった。
スプライトとベルナーオーバーラント産のソーセージ入りジャガイモスープを頂く。
見た目の質素さとは裏腹に味は絶品だった。ソーセージにかけられたスパイスがじゃかいもスープをひきたてて見事なハーモニーを演出していた。これひとつでハイキングの疲労は癒された。食事を終えた後はしばらくロビーでくつろぎながら風景を眺めた。走行しているうちに時間は過ぎていき、午後4時になっていた。山岳ホテルを後にして、今まで登ってきた道を下った。

下山 -Jumgfraubhan

トップオブヨーロッパに戻るとタイミングを合わせたかのように雲行きが危うくなった。
もう一度展望台に登って眺めてみようと思うと、辺りが深い霧に包まれる。雲に飲み込まれてしまった。視界が遮られ何も見えなくなった。アイガー氷河のほうはまだ雲が迫ってきておらず、これから迫ってこようというところをカメラに収めた。クチバシが黄色いカラスもいたのでこれも収めた。
展望台を降りて、実家にポストカードを送った後、下山の電車に乗った。


下山の列車では韓国人の親子と相席になった。お互い、相手の国の言葉は知らないけど何故か英語がわかるという状況は可笑しかった。運悪く、下山のとき筆談するときに使うペンを無くしてしまって、コミュニケーションがとれなかった。僕が一方的に話して、場を持たせた感じだったw
昨日撮ってきた画像を見せると、親子は楽しそうに眺めた。ブリエンツ湖の綺麗な風景が気に入った様だ。
子供にはアイガー落雷の時に収めたムービーが一番大好評だった。

再びウェンゲンへ -Wengen, again

クライネ・シャイデックに戻ると韓国の親子たちと別れて、ウェンゲン行きの電車に乗る。ベルナー・オーバーラント中央で、このルートだけはまだ乗っていなかった。ウェンゲンは昨日、バックバッカーの女の子と別れたところである。女の子はそのままウェンゲン〜クライネ・シャイデックを通っていった。その下りを今から乗るわけだ。

ここからの眺めも例外なく素晴らしかった。ユングフラウにのシンボルマークに山が3つ重なっているのがあるが、その姿をここから眺める事が出来た。三山の壮大な山麗が視界一面に映る。もうなんともいえない。あの壮大な風景を見たら、自分がいかにちっぽけな存在なのかよく判る。ただただ、驚かされるばかりだった。
三山が視界から見えなくなると、ウェンゲンの村並みが見えた。相変わらず美しい村だ。ウェンゲンを通り過ぎ、ラウターブルンネンへ経由してグリンデルワルトに戻った。昨日撮りたくても撮れなかったラウター・ブルンネン〜グリンデルワルトも撮れる事が出来た。

帰路 -Grindelwald


グリンデルワルトに着いたのが21時。ちょうど日も暮れかかる頃だった。この村もいつみても素晴らしいところだ。永遠に居続けたい。
駅から降りると、どこからか音楽が流れてきた。奥の方に見やると、レストラン前に人だかりが集まっていた。近寄ってみると、楽団がレストラン客に向って演奏を披露していた。陽気な音楽で気分がウキウキしてくる。聴けたのは少しだったけど、スイスらしい光景をまたひとつ見れて大満足。
お土産屋を物色しながらホテルに戻ると、すぐレストランバーへ。昨日食べたところと同じ所にした。ウェイトレスさんが僕の顔を覚えていて"Hi!"と笑顔をふりまいてくれた。筆談をした事が印象に残ったのだろうか。僕も"Hi!"と返した。3日も英語使い続けていると、日常会話のように言葉がスイスイと出てきた。「うお、俺、英語で会話でき出る!」って思えた瞬間だった。



その日のメニューもやはり強めのリキュールを頼んだ。昨日と比べて弱いのを注文したが、まだまだ強かった。料理に合うことは変わりなく、食が進む。
部屋に戻ると明日の予定を検討してみた。一応、ある程度決めていたのだけれども、今日ハイキングしたのが相当効いた。雪山は濡れるので勘弁だけどw、ハイキングはまたもう一度してみたい気持ちが強くなっていた。
そして、帰りにみた三山の壮大なロケーション。
明日はどのようにスケジュールを組むにせよ、チューリヒに戻らなくてはならない。
この地を離れるのかと思うと、ものすごく寂しい気持ちになった。この地には明日も含め、3日間しか滞在することができない。ああ、3日間は短すぎたよ…。