2nd Day -ミラノ-

ミラノの朝


朝。
目覚めると、窓が開いていた。同室の子が開けたみたいだ。涼しいそよ風に、レンガの街に浮かぶ美しい朝焼け。帰ってきてから気が付いたけど、よく見ると左手にミラノのドゥオモ(大聖堂)が見える。


とろけて、2度寝してしまった。

ミラノの街、初歩き

しばらくするとようやく目が覚めた。
咳はあいかわらずひどかったが、朝食をとって、まずはかの天才、レオナルド・ダ・ヴィンチの『最後の晩餐』が飾られてあるという教会へ地下鉄も使ってミラノの街を歩く。

サンタ・マリア・デッレ・グラツィエ教会


教会に入るには入場人数制限があるため予約が必要だが、日本でとれなかったので当日の予約に賭けた。結果はsold out。仕方なく、昨日の打ち合わせで念のため用意したプランBで行く事にした。ここから南にある博物館へ向かった。


レオナルド・ダ・ヴィンチ科学技術博物館

博物館はすぐ着いた。まだ開館時間ではなかった。広場には沢山の子供たちが集まっている。どこかの小学校の課外学習のようだ。写真を撮ったり、次に行く城へのバスを確認したり、暇をつぶしていると、ようやく開館し一同は博物館へ足を踏み入れた。
内容的にはダ・ヴィンチが切り開いた学問の発展を紹介し、現在の技術までどのように進歩していったかを解説、実物、模型を交えて展示していた。教会で見れなかった「最後の晩餐」がここでも飾られていた。まあレプリカだろうと思うけど。
 
館内は思いのほかに無駄に広く、全部見回るのに2時間以上はかかった。途中に美しく整理された中庭があった。ほとんどマスクを着けながら回っていたので、途中に出くわす小学生たちの視線がちょっと痛かった。

女スリ(?)にからまれる

博物館を後にすると、今度は地下鉄カイローリ駅が終点のバスに乗り込む。この駅の近くにスフォルツェスコ城へ続く道がある。バスに降りて、道を行くと突然、幼なじみのBくんが女にからまれてた。なんか喚きながらBくんにまとわりつく。何言ってたかわ分からないが「恵んでくれ!恵んでくれ!」と言っているようだった。あるいは乞食を装った女スリか。
たまらず、逃げ出すBくん。Bくんが逃げ切ると、なんと今度は僕に向かってきおった。慌てて、逃げ出す一同。なんだあ、あの女。ナポリではこういうのが多いと聞くが、比較的裕福なはずのミラノでも見るとは思わなかった。みんな何も盗まれたものは無いようだ。気を取り直して城に向かう。

スフォルツェスコ城

スフォルツェスコ城
1355年、ミラノを中心としたロンバルディア地方の一豪族であったヴィスコンティ家のガレアッツォ2世がミラノの西に位置する自らの領地を兄弟であるベルナボーから守るために築城しました。そのヴィスコンティ家にも時代と共に継承者となる跡取り息子がいなくなるという事態が起こりました。その時跡を継いだのが、当時娘婿だったフランシスコ・スフォルツァ。しかし、この時、すでに城は相次ぐ攻防戦でかなり大きく破壊されていました。そこで彼は、この城の主となって権力を握ったと同時に城の跡地に新たな要塞を建設、1466年に完成しました。スフォルツェスコ城には当時のヴィスコンティ家の家紋が現在も残っていますが、現在ミラノ市の紋章にもなっています。

旅するテディより



城の前で何故か吉良吉影風ポーズ。

この城は正方形状になっている建築で、壁に無数の穴が綺麗に整列していた。そして、四つ隅に塔を持つ、なかなか印象的な建物になっている。城門を抜けると広大な広場になっていて、クローバーの芝生が生い茂っている。陽気な天気のせいか芝生の上に外国人がたくさん寝転がっていた。誰かが4つ葉のクローバーを探し出すと、5人一斉に我にと言わんばかり、芝生の上にしゃがみこんだ。陽気に日向ぼっこしている外国人をよそに、せっせとクローバーをかき分けている日本人5人。改めて思い返すと、なかなか滑稽な様相である。しかし、その光景は長くは続かなかった。1分もしないうちに女の子の一人がなんと4つ葉のクローバーを探し当てた。


女の子 「あった♥」
みんな 「うそっ、早っ!!」


こうして我々は醜態を衆人環視の中にあまり晒す事無く、城をあとにすることが出来た。

平和の門


城内を裏へ抜けると、広々としたクローバー公園があり、その奥に凱旋門が見えた。
無知な僕は「パリじゃないよね?」とこぼしてしまった。その門は『平和の門』と呼ばれているらしい。


門に向かって公園の中を散策。途中、池にかかる橋の上で新婚さんが寄せ合って池を眺めていた。顔立ちが日本人ぽかったので日本の新婚さんかなと思っていると、奥の方にとカメラマンが。その人の持っているカメラにはデカデカと中国語らしき言葉でなにか書かれていた。


なんて分かりやすい連中(笑)


そして、その傍らを通り過ぎる5人。
邪魔してごめんなさい。

ジェラード店発見!

門を見終え、公園を一周して城を後にすると、次は今日の『目玉』の高級ブランド街通りへ。目玉と銘打っているが、ぼくはブランドにはさっぱり興味ないので、欲しいと思ったら買うか程度の感じのノリだった。
先ほどの女スリを避けるように別の道を通ると、おいしそうなジェラード屋が。ここに来て初めてジェラートにお目にかかる。一同足を休めて、ミスタ(ミント)のジェラードを頬張る。ウマァァイ!これがジェラードか。普通のアイスクリームと違って粘りがある。スプーンですくい上げるとよく伸びる。ジェラードに満足すると、地下鉄を乗り継いでブランド街へ繰り出す事にした。

モンテ・ナポレオーネ通り

高級ブランドの集うモンテ・ナポレオーネ通り。普通なら「さあこれから買い込むぞ!」と頑張るところだろう。しかし、駅に着いてから僕の体調は異変を感じていた。お腹が異常にゆるい…。さっきの城の公園にあった屋台で買ったファンタが当たったのか(イタリアの水は硬水で日本人は飲めない)、それともジェラードが、それに咳がひどいのに無理して動き回るから複合要因を起こしたか。いずれにしろ、この時はあまり症状はたいしたことじゃなかったので、仮にトイレに行きたくなっても店の中にあるだろうと思って。何事も無いように街へ歩いた。
しかし、それは間違いだった。店にトイレがあるというのはあくまで日本の常識での話だった。そう、イタリアにはデパードだろうかスーパーだろうか店の中にトイレはついていないのである。

ルイ・ヴィトン

最初に向かったのはブランド界の大御所、ルイ・ヴィトン
店内の華やかな雰囲気に圧倒された。こっちはカジュアルな服装だ。合わない。てか、入ったとたん女の子の目の色、変わりましたよ。目当てのものをチェックする同行者たち。僕ときたら、店内をウロウロ眺めていただけだった。ちょっとお腹のことが気がかりだったし…。
Bくん曰く、日本よりイタリアのほうが安いとの事だったが、あまり高級ブランド店なるものに入ったことがない僕としてはどれも高い買い物しか見えなかった。
ヴィトンのベルト、€ 285
眺めるだけなら priceless

パニック イン モンテ・ナポレオーネ

ルイ・ヴィトンの買い物を終え、隣のエンポリオ・アルマーニに入った時それは来た!
いかんヤバい。来る来る…。トイレを探す。いくら、ブランドの都といったって店内はそれほど広くない。すぐ、見つかるはずだと思った。念入りに探してみても見当たらない。おいおい、何だよ〜。ここは高級ブランド店だからキタナいものはつけませんってか〜。お高くとまってんな〜。と、段々腹が立ってきた。
多分、一緒に同行した人は普通に振舞ってったように見えたと思うんですが、アレ、まだ「次の店に行けばトイレなんざ見つかるだろう。」とまだ、タカをくくってたんですよ。その気持ちが余裕の落ち着きと我慢を支えていたものでした。
店を出ると、また急激にキた。我慢の限界だ!
トイレ行きたいから昼食食べようと提案してレストランを探した。それでも、歩くたびにリミットは確実に近づいてくる。高級そうなところばかりで手頃なレストランが見つからず、我慢の限界を越えようとしている。ヤバい!


ミッション・インポッシブル

一時の休息

もうダメかと思った時、脇の小道の奥に手頃そうなレストランがやっと見つかる。
助かった。そこでトイレを借りて用を済まそうとする。だが、なにも出なかった。お腹がキュルルル〜と鳴り、しばらくすると痛みは治まった。あんだけ緊迫した状況のわりにはちょっと拍子抜けしたが、まあ一難去ったということで、気楽に昼食に入ることに。
イタリアに入って初めてのレストラン。
僕はミラノ風リゾットを注文した。いや、イタリア料理は全般的に知識が乏しいのでミラノ風リゾットがなんなのか知るよしもなく適当に選んだ。期待してまっていると、黄色く染まった料理が運ばれてきた。


おお!これがミラノ風リゾットか!



「どれ。」と、スプーンですくって一口いれてみる。
んんんんまぁぁぁぁぃぃッ!!
これが本場のイタリア料理っすか。この柔らかさは何?なんで黄色いの?なんでこんなに美味しいの?舌もとろけるウマさでした。
初めてのイタリア料理。若干、メニューが読めなかったり、注文の仕方がわからず迷う人もいました。写真載ってなかったしね。ジューズを頼みたかったのにパインジューズのつもりでメニューに指差したら、本物のパインが運ばれてきたり、適当に選んだペンネを注文したら唐辛子がふんだんに使われた激辛ペンネだったり(笑)
何よりビックリしたのがパン。
注文もしていないのにイキナリ運ばれた。食べたら料金とられるんじゃないと思って手付かずにいたら、なんと強制的に一人5€入っていた。うぉい5€ は高いよ!1個しか食べて無いし…。食べてない人もいたし…。

最悪だった3時間

遅い昼食を終えると、再びブランド街へ。
気を取り直して楽しもうと思ったら、しばらくも経たないうちにまたお腹の痛みが…。なんてこったい。レストランを出たばかりだというのに…。次のお店はエルメスだった。ここもWC無かった。皆の買い物を待って、プラダだったかグッチだったか次のお店へ行く。そこもWCが無い。


嘘…、この国のWCは一体どこにあるの?


冷静に考えれば、ガイドブックを見れば良かったんだろうが、思考がパニクっていて、頭が回らなかった。WCが見つかるまでひたすら耐えるしかなかった。
もうだめたと思った時、通りを抜けて地下鉄の駅前までみんなを誘導。地下鉄への階段を下りようとすると、「どこへ行くの?」との声。WCに行くと伝えると。「駅には無いよ。」と。何だって?一瞬、耳を疑った。駅にもなきゃ一体どこに…。

彼女から教えてもらったイタリアのトイレ事情

一般的にイタリアのお店にはデパートやスーパーでもWCはない。
では、どこで出来るか…。答えはバール(喫茶店)、レストラン、ホテル(有料)など。
公衆便所はあるが稀に見つかるぐらいである。

ほうほうの思いでバールを見つけ、やっと落ち着いた。しかし、席をたったのも束の間、また激しい緩みがくる。もういや。最悪。思い出したくない。店の中に入って商品を物色したりはするのだが、またお腹のゆるみがやってきて同じ事の繰り返し。ブランドショッピングとごろじゃなくなった。書いてて辛いし、くどいし、もう、この話ここで打ち止め。せっかく高級ブランド街に来たのに品の無い話になってしまうとは…。やはり僕は縁の無い世界なのだろうか。


P.S.
この街に来て初めて覚えたイタリア語

Dov'e il bagno?(ドーヴェ イル バーニョ?)
(といれ ハ ドコデスカ?)


なんかスゴい悔しい。

神降りたまし大聖堂

どうにもならないお腹を抱えて行くと、ブランド街を巨大な建築が見えた。その概観は繊細で細やかな装飾が施されている。その姿は圧倒的だった。『神』と言いようがない。この時ばかりはお腹の緩みも咳の辛さも忘れてしまった。


ドゥオモ。


イタリア語で『大聖堂』を意味する。

ミラノのドゥオモ(大聖堂)
世界最大のゴシック建築。1386年、当時のミラノ公ジャン・ガレアッツォ・ヴィスコンティの命によって工事が始まり、500年もの歳月をかけて完成した大聖堂。天上に向かって伸びる135本の尖塔と2245体の彫像で飾られた白大理石の外観の壮麗さは圧倒的。最も高い尖塔(108.5m)には街を守る黄金のマリア像が立っている。

ブルーガイド社『わがまま歩き』より


撮影場所はドゥオモの裏側


こう、生で立派なものを見せられるとキリスト教徒でなくても敬虔な気持ちになる。これが建てられるまで500年も…。未だ未完のサクラダ・ファミリアといい、人類の創造力というのは寿命を越えてこうも際限がないものなのだろうか。

ドゥオモ広場

ドゥオモの傍らを通り抜け、正面にある広場に向かう。
正面ファザートは工事中で姿を拝める事は出来なかった。
広場にはたくさんのハトが。餌を売っている人がそこらじゅうにいて、観光客が餌を受取るとハトの大群が一斉に餌を持つ手に群がる光景が繰り広げていた。それにしても腹が治まらない。ず〜っとこの状態でその場にへたりこむ。座っているほうが楽だ。何度が餌の押売りが寄ってきたがそういう気分でもないので、断った。

本音を言えばちょっとやりたかった。これを使ってJOJO2部の、

の再現をやりたかった。無念。


他の4人は広場のあちらこちらを撮っている。4人の楽しみを奪うのも悪いし、このままではままならないので別行動することにした。とはいえ、単独行動にならないように男3人、女2人分かれてしまった。女の子たちはショッピング街へ消え、男たちでバールをとる。しばらくするとBくんもショッピングに行きたいと言ってどこかに消えていった。

やっと、ゆっくりくつろげてホッとする。
ヨーロッパのカフェはほとんどオープンテラスになっている、日本と違って車は全然通らず、人々のゆったりとした雑踏が美しいロケーションと相まってヨーロッパ特有のまったりとした空間を生み出している。
  
こういうのをみると、ヨーロッパに来たカンジがするよね。日本にもよくこういうスタイルを真似た店が出てきているが外国人に囲まれている環境まではさすがに真似られないだろう。古い歴史を持つ景観もしかり。

カンパリオレンジを飲みながら、マターリと時を過ごす。(え、カンパリ!?)

大聖堂前のレストラン

解散から1時間半後、再び合流した5人はまたドゥオモの傍らを通って裏側に回り、そこの近くのレストランで夕食をとることにした。アルコールを注文した。風邪ひいてるのにアルコールはいかんでしょうと窘められたが、結局飲んでしまった。写真の無いイタリア語のメニューからテキトーに選ぶと運ばれてきたのはドきもを抜く大きさの料理だった。


で、でかッ!!


いくらなんでも大きすぎ!余裕で5〜6人分はあるよ。
つーかテーブルから半分お皿がハミ出ているよ!
ミラノの天使様、無茶です!これを食いきるのは不可能です!
山分けなど試みたが、他の人のも分量が多く、結局、大量に残す。

夜のドゥオモ

 

ホテルへ

ミラノ観光を終えて、へろへろの状態でホテルにもらう。僕が行く前に処方してもらった薬はほとんど効いていなかった。ひどく咳き込む僕を見て心配したのが、Mさんが風邪薬をくれた。サンクス。
しばらくすると、咳が完全にはおさまらなかったが症状が軽くなる。すごい効き目だ。

お腹の方はホテルに置きっぱなしだった正露丸で対処するとこに。

ミーティング

その後、明日についての打ち合わせをしたが、男3人ともへろへろの状態で、ほとんど半分寝ていた。逆に女の子たちはまだまだ元気だった。打合せ後、部屋に戻る2人を見送って、「あの2人、ピンピンやなあ…」とつぶやく男3人。生物学的に男と女では生活のリズムが違うという話を少しした。その後は滝の様に眠りに入った。

歩いたルート


To be continued...